magic lantern

下克上

R18 診断メーカーのお題『口で散々奉仕させたあとねだらせている兎虎』





部屋には湿った空気が熱を帯びて漂っていた。
「……ッ…は…」
絶え間ない淫猥な水音に、微かな吐息が混じる。バーナビーのものを舐めしゃぶりながら、虎徹は目線だけ見上げてこの規格外の持ち主をそっと盗み見た。
「なんて顔、して……んッ、おじさ…ぁ、」
虎徹が奉仕する行為に抵抗を覚えていたのは最初の頃だけ、今では気分次第で自分から仕掛けるほどになった。もちろん、口に含みきれない程の大きなコレを舐めるのが単純に好きだとか、まして美味しいだとか、そんな理由では無い。デカすぎるものを咥えっぱなしなので顎が痛いし、窮屈な姿勢になるせいなのか疲れるし、唾液と共に溢れる精液は苦くて青臭くて慣れる気がしないのだが、それでもしてしまう理由は一つだけ。
「バニーちゃ、…っ、ふぁ、きもちいい?」
咥え込んでいた口から抜いて、そう尋ねながら鈴口を舌先で弄る。本人よりもよっぽど素直なソレはびくびくと脈打って、透明な液をだらしなく零し始めた。さらに舌先で鈴口を突いて、つう、と雁首や裏筋を舐め上げると頭上から声が上がる。
「ちょ、あんた、わざと…ッ…」
「んー?」
吸い上げるでも深く咥え込むでも無い、ピンポイントの刺激しか与えようとしない虎徹にバーナビーはぐっと眉間の皺を刻んで息を弾ませた。
────こういうのがたまんねえんだよなァ。
一度外に出れば、ほとんどの場合バーナビーは虎徹を「おじさん」だの「あなた」だのまるで他人行儀な呼び方しかしない。今までずっとそうだったので、いきなりどこでも名前で呼んで欲しいなどというわけではないが、こういう時に呼び名が変わったり余裕を無くして表情や言葉使いが素に戻る瞬間を見られるのは優越感を伴う快感だ。遠慮も、体裁を取り繕う余裕も、自分で作っている『ヒーロー・バーナビー=ブルックスJr』という姿も、全てを取り払った、ただのバーナビー。
純粋な快感とは程遠い行為を好き好んでしてしまうのも、そんな姿を自分で見るためだけ。普段外すことのない仮面を脱がして、自分の与える快感や自分自身に興奮しているバーナビーの姿を暴くのはひどく楽しい。単純に、興奮する。
「……虎徹ッ」
優位に立てたと虎徹が緩慢な愛撫を繰り返していたら、あっと声を上げる間も無く口が解放されてぞわりと背筋を粟立てるような声が聞こえた。
「あんたがその気なら、おれにも考えがある」
虎徹が自分の犯したミスに頭を巡らせようとした途端、思考は一気に塗りつぶされてしまう。
「んんッ、や、やぁ、ば、ばにーちゃ、ひ、ッ」
うつ伏せにされた身体が腰だけ引き上げられて、バーナビーによって快感を覚えこまされた場所にぬるりとした感触が這った。まるで反射のように鼻にかかった高い声が上がる。
「あ、あ、やめ、やめぇ…」
ひくついているのが自分で分かるから居た堪れないというより、先に先にと身体ばかりが逸ってあらぬことを口にしそうで虎徹はふるふると首を振って抗おうとした。それを察したのか、くすりとバーナビーが笑う。
「止めろとか、……っ、ん、…嘘つき」
くちゅくちゅといやらしい音があらぬ場所から聞こえ、笑っているらしいバーナビーの吐息も掛かって虎徹は堪らずに腰を揺らした。尖らせた舌先でぐるりと舐めまわされ、皺を伸ばすようにゆっくりと指が這う。周囲を触れるだけの愛撫は、決してなかに入ってこようとしない。
「…ぁ、や、バニー、バーニィ、も、なんで…っ……」
「さて何ででしょうね?」
自分から迎え入れようと腰を動かしても、バーナビーの舌も指も周囲を焦らすようになぞるばかり。虎徹が力の入らない身体をわずかに動かして後ろを向くと、バーナビーはそこから顔を上げてすっと背を伸ばした。指先はくちくちといやらしい音を立てて、そこを刺激している。
「可愛い」
「ん、やぁ……ア、ひッ、やだ、それ、やだ…!」
吐息ごと流し込むように囁かれた低い声に、ぞくぞくとした怖気が背筋から這い上がって虎徹は無意識に背を反らした。バーナビーはぱくりと虎徹の耳朶を咥え、わざとらしく音を立てて舐る。
「ねえ、どうして欲しいかちゃんと言って下さいよ。何て言えばいいか、分かるでしょう?」
虎徹が頭の中ではもうずっと繰り返している言葉を、声に出せとバーナビーは甘ったるく囁いた。言葉を行為の最中に強請られることは初めてでは無かったが、焼き切れて沸騰しそうになっている頭がおかしなことを口にしてしまいそうで、どうしても言いたくなかったのだ。
「言わないと何もしてあげませんよ?それでもいいんですか?」
「…ッぁ、ひぅ…っ……ば、なび…バーナビ、も、もぅ、や…め……」
意地悪をするのは止めて、ずっと欲しがっているものを与えて欲しいと虎徹が言外に懇願しても、バーナビーは指の第一関節までを浅く出し入れする緩い愛撫を止めようとしない。くちゅりと音を立てて微かに指が入れられる度、ぞわりと身体が震えて堪らなくなる。
「欲しいんでしょう?ほら、ちゃんと言って」
欲しい。その言葉が耳元から這い上がって虎徹の頭の中を犯した。
細い指の先っぽではなくて、もう熱さも形も覚えこまされたものを奥まで入れて欲しい。奥や、悦所を突いて欲しい。こんなことを考える自分の浅ましさに気が回らなくなるほど、欲しいという言葉で虎徹の頭は占められてしまう。
「バーナビー…」
「なに」
耳元で囁かれる声はどこまでも甘くて熱い。もう、いい。この熱に全て溶かされてしまいたい。そう思ったら、最後だった。
「───────」
虎徹はバーナビーが求めるままに、彼の望む言葉を与えるためにゆっくり口を開いた。




ぬるエロ兎虎。『ねだらせている兎虎』なのでねだらせてるとこでオワリ。素になると呼び捨てになるとか一人称変わるとか、丁寧敬語攻めとか、私の趣味が兎に炸裂した。実はもう少しで虎がみさくら喘ぎしそうだった。らめえ。