magic lantern

虎が狸になってみました

TIGER&BUNNYの、狸寝入りがついついうたた寝になっちゃう方、虎徹です!いや、狸寝入りっつーかね、身体を休めてるだけで寝てなかったんだけど、気づいたら寝てるっつーことが多くてよくバニーちゃんに怒られるんだよなぁ。寝てる暇があったらトレーニングしたらどうですか!ってプリプリされちまう。うっかり、そんなに怒るとお肌に悪いぞって言ったら誰のせいですか!!ってまた怒られたけど。
うん、それはわりとどうでもいいよね。今の状況だよな問題は。
「……疲れているのかな、こんな硬そうなところで眠ってしまうなんて」
うっかりベンチプレスの台に寝転がって寝てた俺の真横に、超至近距離に、スカイハイが。いやいやいや近い。近いぜ、キング・オブ・ヒーロー。なんつうか、身体の熱が分かる距離って相当近くね?もうひっついてると言ってもいいよね、コレ、どーゆーこと!?
これは狸寝入り貫いてスルーが正解だよな。いや、何か近づいてくる…?
「仮眠室に運んであげたいけど、起こしてしまうのはもったいないな」
え、お前何言ってるの、と思わずツッコミ入れたのと、頭に何かが触れたのはほぼ同時だった。暖かい大きなソレはどうやらスカイハイの手、らしかった。前髪を梳いて流し、頭を撫でてくる。くすぐったいわけじゃねーけど、なんか、むずむずする。は、恥ずかしい……!いい歳したおっさんに何してんだコイツ!お前の手はちびっこファンを撫でるもんで、こんなおっさんを優しく触るためのもんじゃないの、分かってる!?
大声でそう叫びたい俺の気持ちなどお構い無しで、スカイハイはするっと手を顔に滑らせた。おおーい!!!!何してんだお前ー!!!スカイハーイ!!!
実は狸寝入りでしたー、なんて茶化せる空気じゃなくなってるっつうか、何コレ、何事!?スカイハイはこっち側だと思ってたのに、お前は大人組だと思ってたのに、おじさんは最近の若者がよく分からないよ!ああもう誰か助けろ、話ややこしくなりそうだからネイサンはパスだけど、とりあえずアントニオ助けろ!!!トーニオー!!
心内大絶叫、いっそバニーちゃんでもいいから、後で怒られてもいいから助けてと念じ始めた矢先。不意にスカイハイの手が止まった。ん?頬っぺたやらデコやら好き勝手に撫で繰り回していた手が止まり、何だか視界がいっそう暗くなってきたような…?
「好きだ」
時間が止まる、というのはこういうことを言うのかもしれない。あまりの衝撃でそんな、どうでもいいことを思った。かあ、っと身体中が熱くなっていく。
「君にちゃんと伝える勇気を持てるようになるのは、いつなんだろう。こんな風にじゃなく、ね。返事は何でもいいんだ、君の言葉がもらえるならそれで」
あれだけ近かった気配がふっと離れた。入れ替わるように風がすっと身体を撫ぜていく。
「待っていてくれないか」
少し離れた場所からスカイハイの声がした。いつもながらよく通る声だ。
「君の目を見て伝えられるようになるまで待って欲しい。そして、どうか私から逃げないでくれ。君の言葉を全て受け入れるつもりでいるけれど、君を見られなくなるのはとても辛いから」
狸寝入りが全部バレてる、と俺が気づいた時にはスカイハイはトレーニングルームから消えていた。
「……それは反則だろ、キングさんよーう」
ようやく身体を起こし、硬いベンチプレスの台でばきばきになっている上半身を伸ばした。ふっと顔を上げると、トレーニングルームの壁面に設えてある大きな鏡が目に入る。正確には、その中で真っ赤な顔して馬鹿みたいに口開けてる俺が。
「なんだアレ、なんだよアイツ!キング・オブ・ヒーローってあれか、男前じゃなきゃダメなのかよ、レジェンドなんて最高に、って違う……」
もう何か訳の分からないことでも口走っていないと、正気を保っていられない。好きだ、って。明らかにライクじゃない方向性で、相当本気っぽい感じで、スカイハイが。そのままずるずるとベンチプレスの台にまた戻る。突っ伏していると、隣で優しく俺を撫でてたスカイハイの言動を逐一思い出しそうになって、がばりと身体を起こした。いやいやいや。別にあれで終わって残念とかおじさん思ってないから!撫でられるのってけっこう気持ちいいとか思ってないし!ないって!
「うん。大丈夫大丈夫」
「何が大丈夫なんですか。明らかに大丈夫じゃないですよおじさん」
「バニー!?遅いんだよお前、っつうかいやある意味遅くても大変だったけど、でも、遅いよ!!」
後ろからいつもの不機嫌な面でバニーちゃんがやってきて、思わず当り散らしてしまう。バニーちゃんは意味が分からない、と不機嫌な面をますます顰めたけど、1%ぐらいはお前のせーだかんな!あのとき助けてくれっつったのに、来ないお前が悪いぞ。……0.1%ぐらいは。
「意味が分かりませんね。別に分かりたくもないですけど。ところでおじさん、そんなに真っ赤な顔で何のトレーニングしてたんです?珍しい」
「……平常心を保つトレーニング?とか?……多分」
もう狸寝入りも、トレーニング室でうっかりうたた寝も、ロッカールームでついうっかり昼寝も止めよう。怪訝そうなバニーの前で深く頷きながら、そう自分に誓った。



オチが行方不明。いつものことだ。スカイハイの喋り方難しい… 空虎増えろー!