magic lantern

青天の霹靂と未来予想図 1

初夏の日差しを受けた、第四演習場。今年下忍になったばかりのルーキー三班は合同演習ということで集められていた。組み手ではなく、忍術ありの実戦形式での対戦を命じた担当上忍に従って組み分けを決めていた、その時。珍しく遅刻してきた(30分)アスマと珍しく遅刻時間が短かった(一時間)カカシが揃って顔を上げる。
「お前ら、こっち来い」
「全員集まって」
面倒だから組み分けはどうでもいい、と昼寝していたシカマルもぴくりと身体を起こした。
「……めんどくせー」
いつものごとくそう言いながら、チョウジの側に腰を落とす。
「先生、どうしたんだってばよ?」
「どうかしたのか」
ナルトやサスケの問いにカカシは答えなかった。答える代わりに片目を覆っている額当てを戻し、写輪眼を露わにする。その意味を悟った紅がアスマに視線を投げると、アスマはナックルを嵌めながら短く答えた。
「結界を張ってくれ。オレとカカシが出るからお前は子どもたちを」
「分かったわ」
紅が頷いてルーキーの子どもたちを囲むように結界を作り上げる。
「どこのお客さんだ?」
「どこでもいいけどこの子たちはやれないよー」
「大人しく、渡してもらおうか」
二人の声に応じたのは、びっしりと演習場の周りを埋め尽くす抜け忍たちの姿だった。
「何、これ…」
「やだ、どうしよう」
明らかに多すぎる敵に囲まれて、サクラとイノが声を震わせる。ナルトとサスケ、キバが立ちあがろうとしたが後ろから服を引っ張られてつんのめった。
「っちょ、オイ!」
「何をする」
「離せってばよ!」
「……お前ら、落ち着け。敵と戦うだけでも面倒くせー数なのに、お前ら守ってたら余計面倒くせーことになるだろ」
ぐい、と尚もシカマルは三人の服を引っ張る。無理やり座らせてから影を離した。
「だって!」
「奈良の言う通りよ、大人しくしていなさい」
言い募ろうとしたナルトを紅が低い声で制する。既に、戦闘は始まっていた。抜け忍であることを示す、横一文字が引かれた額当てには音や霧、雨など様々なマークが記されている。
「バリエーション豊かなメンツだなァおい」
アスマが呆れたように呟いた、その声が始まりだった。
たかが二人と侮っていた抜け忍たちだったが、あることに気づいて互いに視線を交わす。
「お前ら……暗部だな」
「!?」
「昨夜仕掛けた斥候からの情報とお前らの技は一致する」
抜け忍たちの言葉に驚いたのは紅とルーキーたちだが、当の二人は表情を変えずに自然な動きで敵を倒していく。
「写輪眼のカカシ、既に暗部から退いたと聞いていたがそうではないようだな」
「さてね、暗部は火影直属の忍、退くも退かないもない」
「ここ数年で他里を脅かしている正体不明の暗部が四人いると聞いていたが」
「四人なぁ…」
のらりくらりと言葉を交わして、アスマはチャクラを纏わせたナックルで敵を切り伏せカカシは技で葬っていった。
「カカシ先生が暗部?アスマ先生もだってばよ?」
ナルトの呆然とした声に、誰も答えを返すことが出来ない。暗部と言われても否定出来ないほど、あまりにも二人の力は際立っていた。
暗部の実態は明らかにされることが無いが、火影直属の忍であり相当な実力を持っている者だという共通認識はあった。暗部は実動部隊である暗殺戦術特殊部隊の他に、火影直属の中枢機関として諜報部、参謀部、解析部などいくつかの部署が存在する。存在は知られていても、実態を知る者はそういない。
カカシとアスマは息を乱さずに次々と敵を屠っていったが、力の差に気づいた抜け忍の一人が結界に近づいた。紅が守っているちょうど反対側から。
「名家の子息が勢揃い……だが、使い物にならなそうなのもいるな」
敵の言葉と視線、そしてクナイがチョウジに向けられていることに気づいたカカシが近くにいる敵を倒し、どちらかといえば結界の近くにいたアスマがクナイを飛ばしてそれを弾こうとした、瞬間。ひゅっと敵の手からクナイがチョウジに向かって真っ直ぐ放たれた。
「チョウジ!」
「イノ!」
幼馴染の名を呼んで庇ったイノと親友の危険に気づいたサクラの悲鳴が重なり、同時に防護結界がクナイを弾き飛ばす。結界が内側から張られたことに気づいた紅が思わず振り向くと、たん、と身軽に足が地を蹴り二重に張られた結界から一人の下忍が抜け出した。チョウジに向かってクナイを投げた敵に千本とクナイを投げて息を止める。
「二人とも大丈夫だな?動くんじゃねーぞ。……おい、何やってくれてんだテメー」
「奈良!?戻りなさい!」
紅は下忍の名を呼んでから、自分までもが防護結界に包まれたことを悟った。下忍、それもアカデミー卒業直後の子どもが作り出せるとは到底思えないほどのものだ。
「あーあ……」
「キレちまったよ……」
これから起こる事態を正確に予測できた暗部兼上忍二人は戦いながら思わずため息をついた。出来ることなら、このまま隠し通させておきたかった。本人がそれを一番の願いだと言っていたからだ。滅多にキレることなどない、温厚というよりは生来の面倒臭がりのために感情の波風を立てないはずの少年が、隠し通してきた真実さえも振り切って力を明らかにした理由は一つしかない。
「テメーら、俺のダチに手ェ出して生きて帰れると思うなよ?チョウジのこと馬鹿にしやがって」
そう言いながら、呆然としている紅とルーキーたちを背にシカマルは即座にカカシとアスマが応戦中の場へ飛び去る。離れた場所で交戦していた二人がすぐ側に張り付いた。
「まさかこんなガキが暗部だと?」
抜け忍たちは警戒して一処に固まる。防護結界に手を出そうとした者もいたが、物理攻撃もチャクラも全く通じなかったのだ。それを作り上げたと思しき子どもに攻撃しようと一斉に向かう。
「シカマル!!」
イノたちの悲鳴はカカシとアスマが敵を地に伏せる音で遮られた。シカマルは顔色一つ変えず、避けようともしない。
「はいはーい、どうすんの」
「殲滅すんに決まってンだろ、実行部隊なんだからどうせ珍しいモン持ってねーだろーし、大体の背後関係は読めた」
「へいへい、あれな、結界張ったら言えよー」
喋りながらもカカシとアスマはシカマルの傍で応戦中、シカマルは一人で話しながら紅が視線で追うのもやっとのスピードで印を組んでいた。ヒナタが白眼でサスケが写輪眼でそれを追いかける。高等忍術であることは分かっても、今まで見たことなどないもので何をしているのかさっぱり分からない。
「シカマル……」
自分たちを守るように結界を作り出した、幼馴染の背をイノは茫然と見つめる。彼が周囲の認識ほど茫洋としているわけでも暗愚なわけでもないとよく分かっていたが、よもやこれほど力の差があろうとは思わなかった。今まで何らかの理由があって、幼馴染である自分たちにさえ力を隠していた彼があれほどまでに怒っているのは。
「……うん、シカマルはやっぱりすごいね」
イノの視線にチョウジは頷いてひっそり笑う。彼が、自分たちのことで怒ってくれたのがとても嬉しかったのだ。チョウジがほほ笑む先で、シカマルは印を組み終えて二人の背中に声をかけた。
「…行くぞ」
「了解」
「いつでもいいよー」
二人の返事にシカマルが頷いた途端、守護結界とは異なる、闇そのままの黒い結界が敵ごと空間を包みこむ。影ではなく、異空間とさえ呼べるようなそれ。
「悪いねー、あの子、キレちゃっててさァ」
「人を見かけで判断するな、とお前らの里では教えなかったか?」
アスマが空間内に放った雷がカカシの火遁によって業火となり、空間の中で爆発を起こした。そして、何も、残らない。
「さてと、どうするよ?シカマル」
アスマの声に指差す方を見れば、自分たちを呆然と見上げる紅と同期たちの姿。シカマルは両脇に立つカカシとアスマに目線をやって、自分たち否自分を食い入るように見つめる同期を見やった。
カカシとアスマは暗部であることを否定しなかったし、シカマルも二人と共に戦ったことがあるのだとバラしたのだから暗部であると明かしたのと同義だ。敵がチョウジを狙い嘲笑したものだから、つい我慢ならずに出てきてしまったがシカマルが暗部にいることは長年の極秘事項。そもそも暗部は表に姿を現さないと決まっている。頭を掻いて、シカマルはふぁあ、とあくびをした。どうするもこうするも。
「…バレたんだった、めんどくせー」
「え、それめんどくせーでいいんだ?一応、極秘なんだけどな?」
カカシの声が面白がっている色を含んでいることに気づいたが、それを咎めるのも面倒くさい。
「あー……マジめんどくせえ。記憶操作すんのも表消すのも面倒くせえ」
「いやお前それ秒単位で出来るだろ」
もはや接頭語か接尾語なのか、面倒くさいと繰り返すシカマルはアカデミーで見てきた姿となんら変わらないようにルーキーたちには見えた。だが、あの力は。担当上忍が暗部だと分かっただけでも驚きだというのに。
「面倒くさいったら面倒くせー。よってお前ら」
そこで言葉尻を切ると、シカマルはふいに満面の笑みを浮かべた。あまりのレア物件に全員が硬直したが、硬直の意味を取り違えたシカマルはちげえちげえ殺したりしねーって、とさらに物騒な言葉を重ねる。しかしレア物件の衝撃が大きすぎて、もはやあっさりと殺害を公言されたことなどどうでもよくなってきていた。あ、やっぱり暗部なんだとおかしな納得をした者もいたほどだ。
「一蓮托生、運命共同体、毒を食らわば皿まで。呉越同舟。あ、これ違った」
「うん、別に俺ら敵じゃないからね、まだ」
「まだ!?」
さらに物騒な発言を今度はカカシが続けて、ルーキーたちは思わず異口同音に突っ込んだ。三人は身軽に地面に降りてくる。シカマルがひょいと手を振って結界を壊した。
「っつーわけだから、行くぞ」
「どこへ!?」
「三代目ンとこだよ、暗部に入るにゃ火影様の許可っつーめんどくせーモンがいるんだからよ」
「いやいつのまにそれが決定事項に」
「というか火影様の許可は面倒臭い代物カテゴリーなのか」
「今、さらって暗部って!」
「まあ入るっつってもなァ、予備軍というか候補生というか二軍というかお留守番というか」
同期たちのツッコミをものともせずに、シカマルはのんびりといつもの口調で話している。
「だんだん例えが雑になってきてるぞ、お留守番って」
アスマが苦笑するとシカマルは面倒くさそうにアスマを見上げた。
「んー?だって俺が姿消すのめんどくせーしお前らの記憶弄ンのめんどくせーしそんなのやだし。それならお前らがこっち来ればいいだろ?任務は修行、とりあえずの目標こいつら」
「え?オレら?とりあえずとか傷つくなー、その言い方。これでも稼ぎ頭ヨ?」
「おら、行くぞー」
「ちょっと!シカマル!オレらへのフォローはないの!」
超絶スルーをかましたシカマルはほらほら、と腰が抜けている同期に手を差し伸べる。あまりに様子がいつもと同じなのでついキバはシカマルの手をそのまま掴んでしまった。さっき、目の前で人を殺した、手を。
「……あ」
気がついたキバが手に目線を落とすと、シカマルは即座に手を離して両手を上げた。ホールドアップ、降参のポーズだ。
「悪ィ。めんどくせーからいっか、って思っちまったけど、よく考えなくても嫌だよな、暗部とか。悪い、考えたんな…うお!?」
諸手を挙げた姿勢のまま、踵を返してアスマたちのところに戻ろうとしたシカマルの後ろから横から弾丸のように突進してしがみつくルーキーたち。
「一蓮托生なんだろ」
「運命共同体だって言ったわよね」
「毒食らわば何とやらだ。奈良家の毒なら、さぞかし良く効くだろう」
「だってお前、オレらの友だちだってばよ!」
ぎゅうぎゅう、とシカマルを核に人団子を作ったルーキーたちの姿にカカシは目を細めた。
「……だから言ったデショ、大丈夫だって」
「あー……、だな」
シカマルもまたカカシのように目を細めて返り血が一筋走る顔を綻ばせる。アスマはシカマルとしがみついて離そうとしないルーキーたちを見回して安堵の笑みを浮かべた。紅は黙ったまま状況を整理するために溜息を一つ落とす。
目の前で敵をこともなげに退けた力、どこに行ったのか分からない敵、分からないことは山ほどある。けれど。それらは全て自分たちを守ろうと彼が行ったこと、彼が滅多にない激怒を見せたのは自分たちが攻撃されたから。記憶を消去されてもおかしくないのに、そんなことはしたくないと言った彼。全ては、自分たちのため。ならば、拒絶する選択肢などルーキーたちには無い。
忍であれば遅かれ早かれ血に染まるは必定、ただ彼はそれが少しばかり自分たちより早かっただけ。
「なあなあ、お前なんでそんなすごいんだってばよ!?」
「っていうかさっきの術なんなの」
「いつからあんなこと出来るのシカマル」
「本当に暗部なの?先生たちも?」
矢継ぎ早に飛んで来た状況説明を求める質問に、シカマルはぱちりと瞬きをした。緩やかにサイドの同僚を見遣って、一言。
「説明よろしく、カカシセンセー」
「え、オレ?」
説明可能な三人のうち、面倒臭がりだが最も賢いシカマルに言われたカカシは自分を指差して尋ね返した。シカマルは頷いて、めんどくせーと呟く。彼は途方もない面倒臭がりではあるが、あまりに怠惰に過ぎる気がする、とアスマは眉間に皺を寄せた。嫌な予感がする。
「…シカマル、最後に寝たのいつだ?」
あんまりなアスマの質問にルーキーたちが口を挟む間もなく、シカマルは考え込んだ風に首を傾げる。その様子にカカシとアスマがルーキーたちの人団子からシカマルを救出した。答えられないとはどういうことだろうと幼馴染たちが不審がる間もなく、今度はカカシが尋ねた。
「じゃあ最後に食べたご飯は?」
「兵糧丸と飢喝丸」
それは食事ではなく非常用の薬だ、と全員一致でルーキーと紅はツッコミを入れる。
「いつ食った?」
上忍二人は慣れているのか、動じずに質問を重ねた。
「……多分、昨日?」
ツッコミ所が盛り沢山過ぎて、もはやルーキーたちは声も出ない。
「後はオレたちがやっとくから、とりあえずお前は寝ろ」
「その分じゃ、家にも帰ってないね?」
ん、とシカマルはカカシの問いに頷きながらそのまま俯き気味に寝に入るという器用な芸当を見せた。アスマが抱き止めて身体を抱え上げる。
「オレは寝かせてくるから、三代目ンとこで話してろ」
「りょーかい。シカクさんとヨシノさんに殺されないようにねー」
「おーなんとか頑張ってくらー」
かなり物騒なことをのんびりとした口調で交わした後、アスマは飛び去った。カカシはルーキーたちと顔を見合わせて、へらりと笑う。
「任務与えてるの三代目なのにさー、ああなる度に運んだオレらが半殺しの目に遭うんだよネー」
理不尽だと思わないー?とカカシは笑って、立つように促す。
「シカマルを仕事漬けにしちゃった、元凶に会いに行きますか」
そして衝撃から抜けきれないでいるルーキーたちを連れて火影執務室へと向かった。




「三代目ー、バレちゃいましたー」
てへ。と効果音がつきそうにへらりと笑ったカカシに火影は鋭い目線を向け、後ろからぞろぞろと出てくるルーキーたちに眼を止める。そこに下忍として認識されているはずの奈良家嫡子の姿は無い。
「……お主らが付いていながら何たる失策じゃ」
「いやー、抜け忍の連合軍に襲撃されちゃいましてネ。で、この子らは予備軍で二軍でお留守番になるそうですよ」
「そうか、それはよかった。…さて、どこから話そうかの」
カカシの言葉に一切を理解したらしい火影が好々爺の笑顔で言いかけると、カカシが即座に迫った。身の危険が迫ることを教えるのは部下の義務だろう。教えたところで危険から逃れる術など無いが。
「その前に火影様」
「ん?」
にっこりと仮面のような笑顔を張り付けたカカシに、さらに理解を重ねた火影は青ざめた表情で視線を泳がせる。この展開、既に何度も迎えているのだ。シカマルが倒れた、しかもそれが同期である彼らにバレた、ということは今までのソレよりさらなる事態が簡単に予想出来る。
「シカマルが一週間ぐらい家に帰ってなさそうなんですが、どういうことですか?さっきアスマが寝かせに行きましたから、もうすぐで来ますよ?」
何が、とは言わない。むしろ言えない。
「うっ…しょうがないじゃろ、あやつほどの力の持ち主はそうおらん」
おらん、の言葉と共に影が火影に忍び寄った。影を操る一族。
「しょうがないのは上司の教育及び管理不行き届きだからかしら?」
朗らかな笑顔と共にどこからか姿を現したのは若かりし頃に美貌で名を他里にまで轟かせたという、シカマルの母だ。どこから出てきたんですか、とルーキーたちは訪ねたかったが目の前で青ざめて冷や汗をかいている火影を前に何も言えない。
「ヨシノさん、お早いお付きで。アスマは?」
「ウチの人に締め上げられてるわよ。だから私はこっちに来たの。あら、イノちゃんにチョウジくん」
アスマが夫であり奈良家当主のシカクに締めあげられていることと、『だから』という接続詞を繋げたヨシノにカカシと火影は目を合わせて冷や汗を垂らし、少しずつヨシノと距離を取ろうとした。
「こ、こんにちは、おば様」
「あの、シカマルは」
幼馴染であるが故、イノとチョウジは奈良家当主の妻が怒ったときの恐ろしさをよく知っている。逃げ出したいほどの恐怖ではあるが、逃げられるわけがないので気を逸らそうとシカマルの話題を出して上司たちを救出しようとした。が。
「シカマルなら家で寝てるわ、どこかの誰かが無能なせいであの子が大切に守ってきた平穏が崩されて?しかも一週間ぶりの再会でただいまも私たちに言ってくれなくて?誰のせいとは言わないけれど、部下の仕事の管理も出来ないのはどこの誰かしら?ねえ火影様?畑上忍?」
美しいまでの笑みが空恐ろしい。ヨシノは中忍のはずだが、この迫力は何事だろうかと初めて目にするルーキーと紅はビビり気味だ。
「す、すまん!つい仕事を任せたわしが悪かった!」
「止められなくてごめんなさい!」
にっこり笑って目線で釘を指すヨシノは影で二人を縛り上げ、土下座させている。影という影、それこそ執務室内の全ての物の影が二人に伸びていた。
「まあいいわ、私はこれぐらいで。多分、あの子が起きたら相応のことをするでしょうから」
これ以上何を!? 土下座の上に吊るし上げ、さらには何をするつもりなのかこの一家は。ルーキーと紅が扉の側まで避難して顔を見合わせる。
「ほんっと勘弁して下さい!というかシカマルを止めて下さいお願いします!」
「何を止めるのかしら、あの子は不相応な報復はしないわよ」
相応ならするのか。幼馴染以外の七人は総じてツッコミを入れたが、やりかねないなとイノとチョウジは静かに頷き合った。二人の幼馴染は滅多に怒らないし面倒事は大嫌いだが、やられて泣き寝入りをするほどか弱い精神をしていないと長年の付き合いでよく理解している。ヨシノは美しい笑みを少しも壊さない。
「別に?SS任務に作戦も情報も与えないで任務地に突如放り込んだりしないわよ、薬と毒は配合が違うだけで同じだけれどわざと取り違えたりもしないわ」
それは死にます確実に、と思っても言えない。あのぼーっとした同期にそんな側面があろうとは。
「申し訳ありません!つうか作戦くれないのほんと困ります、死にます、オレもアスマも」
「薬というか医療関係は里全体に被害が…」
「そうよねえ?三か月前、同じように特Sの任務に作戦与えないで放りこんで、瀕死だったものねえ畑上忍」
やったのか、というかなぜシカマルがカカシたちの生死を握っているのか。だんだんと哀れを催してきたルーキーたちを見て、イノが元気よく手を挙げて話を遮った。ヨシノが途中から面白がって締めあげていることにようやく気がついたのだ。
「はーい、おばさま!先生たちはそれぐらいにして、私たちに教えてもらえませんか?シカマルのこと」
「起きたらシカマルにも聞きたいけど、ぼくたちが先に聞いてたらいろいろフォロー出来ると思うんだ」
幼馴染二人の勇気ある発言にルーキーたちだけでなく、大人三人は涙せんばかりに感謝している。ヨシノはそれもそうねえ、と言ってようやく影を解いた。
すると。
「失礼します!」


スレというより暗部設定、かな。全然スレっぽくない性格。